厚生労働省は5月1日に「第1回 労働基準法における「労働者」に関する研究会」を開催し、労働者性の判断基準の在り方などの検討を開始しました。
日本の労働基準法における「労働者」の判断基準が、約40年ぶりに見直される動きが進んでいます。
この議論は現代の働き方の多様化を背景に、既存の定義では対応しきれない課題を解決するための重要なステップと言えるでしょう。
・現行の「労働者」の定義と問題点
労働基準法第9条では、「労働者」とは「事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されています。
これに基づき、実際には以下の2点が主要な判断基準とされています。
- 他人の指揮監督下で働いているか
- 報酬が「労働の対価」であるか
しかし、近年のテクノロジーの発展により、ギグワーカーやプラットフォームワーカーといった新たな働き方が拡大し、この基準では現実に即していないという指摘がなされています。
・見直し議論の背景と目的
厚生労働省は2025年に有識者会議を設置し、「労働者」の該当性を見直すための議論をスタートさせました。
この動きは、ネット通販の配達員やギグワーカーが従来の基準に当てはまらないため、労働条件に関するトラブルが頻発していることが一因です。
例えば、UberEats配達員の事例では、契約形態にかかわらず、実際には「指揮命令下」で働いていると見なされたことがあります。
このような裁判例は、判断基準の曖昧さを浮き彫りにしました。
・今後の影響と展望
新たな定義が確立されれば、以下のような影響が予想されます。
企業への影響:業務委託契約の見直しや、勤務時間の管理方法の改革が求められる可能性。
個人事業主への影響:「労働者」として認められることで、労働法の保護対象に入る可能性。
現代の多様化する働き方に対応するため、今後の議論はますます注目を集めるでしょう。
「労働者」としての定義が、働くすべての人々の権利を保障する新たな時代を切り開くことを期待したいものです。
【厚生労働省「労働基準法における「労働者」に関する研究会 第1回資料」】https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57506.html